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【2018入賞者インタビュー(5)】杉山絢子さん~命に直面する病気になった時の困りごとは、いろんな人で一緒に解決していける~

2018年度「チャンピオン・オブ・チェンジ」日本大賞 入賞者インタビュー⑤

 

杉山絢子 (すぎやまじゅんこ)さん

一般社団法人CAN net(キャンネット) 代表理事

自身の病気や家族の看取りを経験し、がん専門医として働きながら、病気をした人がその人らしく生きていくために何が必要かを考え続け、まず自分が第一歩を踏み出さねばと2012年に活動をスタートしました。札幌と旭川、東京を拠点に、「チームがんコンシェルジュ」による相談など患者や家族への支援を行うほか、医療や福祉、学校等の専門家と病気経験者が学び合う場を設け、地域の中で誰もが自分らしく生きることを可能にするための活動を拡げています。

 

 

Q. 活動を通してどのような社会課題に取り組んでいらっしゃるのでしょう?

 

病気になることや死に向かうことについて、どうしても隠されがちだったり、それに関して学ぶ機会が少ないことが課題だと感じています。

私は団体の活動とは別に医療従事者として現場で働いていますが、突然病気になることへの備えが個人も社会も少ないがために、病気になった時に本来ある制度や周りの助けを使えないことが多いように感じています。そのため「病気になった」ということだけで、その人がマイナスの状態に陥ったり、その人らしくいられなかったり、社会の中でうまく役割が果たせないでいることがとてももったいないし、課題だと考えます。

 

Q. そうした課題を解決するための具体的な活動について教えてください。

 

団体の外部に向けた活動は大きく分けて3つあります。

一つ目は病気になる前に学びを深めていこうという学び場作りの活動です。二つ目は、病気になった時にはやはり困ってしまうので、Webを使った相談窓口を開設しています。三つ目は病気になった後もその人らしく過ごせるようなサービス作りです。CAN netは札幌と旭川、東京の3カ所で活動していますが、それぞれの地域でいくつかのプロジェクトを実施しています。

こうした外向きの活動のほかに「内向き」の活動もあり、それには過去もしくは現在病気を経験している当事者の方にメンバーとして入っていただいています。メンバー向けのプログラムでは、自分の病気のことを他者に語れるようになる、サポーターとして活動できるようになるといったステップがあり、組織の活動に関わってもらうことで、その人の成長を促したり、居場所を作ることを目的としています。ボランティアとして参加してくれた一人ひとりが「自分らしく」生きられるようになるためのプログラムです。

 

Q. 特に今力を入れていらっしゃる活動は?

 

札幌、旭川、東京の3 つの拠点ごとに異なる活動に力を入れて取り組んでいます。東京はがんになっても働ける会社を増やす「がん×働くプロジェクト」、旭川は、認知症とがんの合併問題から医療と福祉をつなぐ地域作りに取り組む「がん×認知症プロジェクト」です。札幌では、抗がん剤で髪が抜けたりといった病気になった時の外見変化をサポートする医療美容プロジェクトに力を入れています。

外見変化には抗がん剤や治療による皮膚の変化や抜け毛、傷などがあります。それに対して、美容関係者がウィッグやカバーメイクの相談に乗ったり、乳房切除した方にはエピテーゼというシリコン製の人工乳房をつけたりします。そういうサービスが実はいろいろあるのですが、それが当事者にうまく届いていないというのが課題だと思っています。

ですから、今、医療美容を広めるサポーターを養成しています。また、医療美容の相談に乗ってくださる方に個別にヒアリングして、医療美容マップという案内冊子を作っています。まずは北海道版を作り、病院や区役所などに置いてもらって、病気になったときにアクセスできるようにしています。

 

がん患者さんたち向けの月1回の医療美容相談会の様子

 

Q. 活動を続ける中で直面している壁のようなものはありますか?

 

どのプロジェクトもそうなのですが、病気経験者や医療者、病気経験のない方、専門職などいろんな方が集まって、広める段階を作っているところです。ただ、私の仕事の場でもある医療業界に理解してもらうのが、一般の方にわかってもらうよりも難しいなあと実感しています。

病気になった時の個々のニーズや必要なサービスの選択肢は、本来、個々の患者さんやご家族への理解をベースにして、患者さんに代わって医療職が広げてくれるはずなのですが、業界独特の事情もあるのか、患者さん個人の困りごとやニーズに目を向けられる人が、増えてきているとはいえ、やはりまだ多くないんです。

自分も医療業界にいるので、みんながとても一生懸命働いているのもわかっていますが、今までのやり方が変えられない医療業界に社会のさまざまなニーズが押し寄せているのを目の当たりにすると、どうやって今後業界が変わっていくんだろうと思います。病院や地域が変わっていけるように揺さぶりをかけ、病院の中で違うサービスを取り入れて仕組みを作って行きたい思いから、その中のひとつの役割を担っていますが、本当にそこが難しいなあと思っています。

 

Q. どんな人たちを仲間に活動を続けていらっしゃいますか?

 

全国に60名くらいボランタリーに関わってくださる協力者がいて、みんな頼りになっています。どの段階で関わってくれてもいいとお伝えしていますが、短時間の方もいれば毎日活動に参加してくれるコアな方もいて、それぞれが活動を担ってくれています。

団体には事務局長をはじめ各プロジェクトのリーダーなど10名程がいますが、彼らは、何が適切か、新しいものをどう作っていくかといったことを一緒に考えていけるのですごく信頼しています。さらに弁護士や看護師などの医療職、美容関係、お寺や企業の方に病気で治療中の当事者までそれぞれの形で関わってくれていますが、みな信頼でき、いろいろな視点があって面白いなあと思います。

海外×医療をテーマにNPO法人ユニカセとコラボイベント (前列左から2番目が杉山さん)

 

Q. 活動の成果として誇りに思われることが何かありますか?

 

現在の60名の協力者や以前ご協力くださった方々、そういうCAN netに関わった方が何か得るものがあるようにと活動してきました。そうして生まれた仲間たちが一番の成果かと思っています。病気治療中で、いつも「自分なんか」「私なんて」っていうのが口癖だった女性が、年月が経ち自分の経験をたくさんの人を前に話せるようになり、その後、病気の経験者の方が集まるコミュニティサロンを中心となって運営するようになった例もあります。CAN netの活動の主体者になっていったり、別の課題に主体的に取り組んだり。5年やっていく中で、そういう主体者となる人たちが増えていることが活動の成果ですし、自慢できることです。

もう一つ、昨年初期メンバーの方が乳がんの再発で亡くなったのですが、彼女の旅立ちまでを医療美容のチームみんなで支えました。関わったみんながまた新しく学ばせてもらい、次に進めたと思います。エンジェルメイク(*亡くなった方に血色カバーなども含め生前と同じような外見にするメイク)は通常は葬儀屋さんなどが行うのですが、彼女のことをよく知っている人たちで行い、ご家族のグリーフサポートもしました。生きている時から亡くなる時まで、綺麗になるためというよりは元に戻るための医療美容がもっと社会に広がるといいなと思っています。

 

Q. 活動によって社会が変化したと感じることはありますか?

 

私たちと同じような活動をしている団体は他にもありますから、私たちだけでやったわけではないというのが前提になりますが、社会の中で病気やがんについてオープンにしやすくなっているなと思います。命に直面する病気になった時の困りごとは、解決していけるんだということ。それも私たちのサービスの利用者や病気経験者だけが取り組むのではなく、いろんな人たちで一緒に解決していけるんだということ。私たちが今やっている活動が、そういう考え方がが広まるきっかけになっているのではと思います。

 

Q. 杉山さんご自身は変わられましたか?

 

視野を格段に広げてもらえたと思っています。

以前は、医者として、いつもの仕事場で患者さんを通じてしか、いろんな社会の仕組みを知らなかった。今は、私自身が生身の一人の人間として社会に出ていくことで、いろんな仕事や課題に出会っています。人それぞれの人生を生きていく大変さも、素晴らしさも、また違う意味ですごく感じられるようになってきました。自分の視野が広がり、私自身も見えるものや、やれることが変わってきたなあと感じます。それが次に私に何ができるのかも見えるようになってきたことに繋がっていると思います。

 

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