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【2018入賞者インタビュー⑵】田村亜紀子さん〜当事者の子どもたちには、受け身にならず「味方がいるから大丈夫」と思って、学校や社会に飛び込んでもらいたい〜

2018年度「チャンピオン・オブ・チェンジ」日本大賞 入賞者インタビュー②

 

田村亜紀子 (たむらあきこ)さん

特定非営利活動法人チャイルド・ケモ・ハウス副理事長

ご長男が小児がんで入院し、患児と家族が一緒に過ごせる治療環境を実現したいと 活動を開始。ご長男の他界後も医療関係者や患児家族、学校関係者、建築家らとと もに施設づくりに奔走し、2013 年に日本で初めての小児がん専門施設「チャイル ド・ケモ・ハウス」が完成しました。医学の進歩で小児がんのサバイバーも増えて いることから、学校や地域で自立した生活が送れるよう、専門的な支援やボラン ティアの育成にも取り組んでいます。

 

Q. 活動を始められたきっかけは何ですか?

大学在学中の阪神淡路大震災のボランティアで、ボランティア活動や社会貢献活動に興味を持ちました。結婚し出産した後は、子供が元気に育っていた2歳まで子育てと並行して近所の肢体不自由児の方をサポートするボランティアをしていました。その後、長男が小児がんになり闘病生活に入りました。まさか自分たちが当事者になるとは思っていませんでした。

長男の病気がいったん良くなった時、今のチャイルド・ケモ・ハウスの活動を始めました。息子と闘病・入院生活を送ったことで、小児がんの子どもと家族に本当に必要なものは何かを感じることができました。必要なのに実現されていないもの、それは「家族と治療に向かうことのできる環境」でした。それからは、小児がんになっても家族と一緒に治療に向かえる施設が必要だと、医療関係者はじめ当事者や家族、いろんな関係者と一緒に活動してきました。

 

Q. 今の活動の根本にある社会課題について聞かせてください。

 

私にとっての大きなテーマは、子どもたちが暮らす学校や社会の中でお互いの偏見や無関心や誤解を、どのように一緒に生きていくための力にしていくかということです。マイノリティとマジョリティが共生していこうとする力を引き出せるような活動をしたいと思っています。

以前、神戸の震災で被災した外国人のための外国人地震情報センターから発展した多文化共生センターで、日本で暮らす外国人を支援するボランティアをしていました。相談者は日本で働いている南米やアジアの方々が圧倒的に多かったです。でも、彼らが日本社会を支えているにもかかわらず、その子どもたちの存在はあまり大切に扱われていないように思いました。学校では外国にルーツを持つ子どもたちがいじめられることはめずらしかったないので、偏見、無関心をなくしたいという思いはありました。

小児がんや病気の子どもたちについても似た思いがあります。治療で頑張っている子を支えたいという思いはもちろんですが、ある程度元気になって元の学校や社会に戻った時に、周囲が偏見や無関心、誤解などを持たず、正しい知識を持って友達になってくれるかというところに関心があります。私がずっと持ち続けているテーマはそういうところだと思っています。

 

Q. 問題を解決するために具体的にどんな活動を?

 

チャイルド・ケモ・ハウス施設内で行うご家族の生活面でのケアや、患者さんのサポート、イベント開催などを担っています。もしお子さんがお家での支援だけでは社会復帰が難しい場合、ハウスに来ればピアサポートの場でいろんな人と知り合ったり、体力面のサポートを受けたりすることができます。

あとは、行政から委託されている小児慢性特定疾病の自立支援事業を行っています。これは、小児がんも含めた難病のお子さんたちのご自宅を訪問する事業です。自宅療養からきちんと社会に戻っていけるような架け橋の役割を持った事業になります。

偏見によっていじめを受けるかもしれないからといって、病気の子どもたちが家や病院に閉じこもってしまっては、やっぱり社会は変わらないと思うんですよね。

そのために一般の人たちが関わりやすいおもちゃの交換会などのイベントを開催し、小児がんの正しい知識が広まるようなワークショップも行っています。楽しいイベントを通して「知る」ことにより、一般のお子さんと病気の子どもたちとの溝が埋まればいい。私たちが今行っている支援というのは、患者や家族としても、医療者という専門家としても、一度入院や職務を経験して、こういうのが足りないなという実感から出てきた活動です。

小児がん啓発イベントでの子どもワークショップ

 

Q. 先ほど「マイノリティとマジョリティの共生」がテーマとおっしゃっていましたが、もう少し詳しく教えてください。

 

例えば、学校に外国人の子をいじめる子がいたとしたら、いじめる側がもちろん悪い。でも、もしかしたら情報量が足りないからいじめるのかもしれない。小児がんの話をするときに「髪が抜けるのは、抗がん剤というがんをやっつけるとてもしんどい治療をしているせい」と説明します。そうすれば、小児がんの子どもたちはそんなに大変な経験をしているんだとわかり、髪の毛の抜けている子をいじめる人は出てきません。たとえ出てきたとしても、多数の人が正しい知識でかばってくれると思います。病気以外でちょっと違う子どもたちについても、同じような方法で理解してほしいと思っています。

がん教育などの講演でよく言うのですが、ちょっと違う子はどこか頑張っている子だと私は思っています。例えば外国からきた子供たちは日本語を覚えるのに必死で頑張っているし、元気そうに見えてもちょっと外見に手術の跡が残っている子は、その手術を頑張った子たちなんです。そういうちょっと変わっている子がいても壁を作らないで、お友達になってという話をします。一般の子どもや親へのアプローチはすごく大事だと思っています。

その反面で当事者は受け身でいいのか?という思いもあります。もし困難を抱えている子どもや家族で、もっと他の子どもたちや家族と交わってみようと思った時には、自分たちから話しかけたりして行動を起こして欲しいなと思います。「誰も気持ちをわかってくれない」と決めつけるのではなく。

チャイルド・ケモ・ハウスは、どんな気持ちになってもどんな状況になってもいつも味方です。ですから、他の人にわかってもらえなくても「自分たちには味方がいるから大丈夫」と思って、社会や学校に飛び込んでもらいたい。大丈夫だったらそれでいいし、大丈夫でなかったら戻ってくればいいだけなので。当事者が自信を持って生活してほしいという思いは強いです。偏見をできるだけなくす活動と、当事者が自信をもつ支援を両輪のテーマにしたいと思って、ずっと活動を続けています。

 

Q. ご自分たちの活動の成果として誇れることは?

 

チャイルド・ケモ・ハウスに滞在された患者さんのご家族で、ハウスでお子さんを看取られたがいらっしゃるのですが、そのお母さんに「こういう場所があるっていうことは本当にすごい事なんですよ」と言っていただいたことは、私の中ではとても大きいことでした。

施設が完成した時、皆さんから「おめでとうございます。施設ができて、すごく嬉しかったでしょう?」と聞かれたのですが、私は建物が完成した喜びより、「これからここで本当に必要とされる活動を実現していけるのだろうか」という不安の方が大きかったんです。

ですから、完成から2年ほど経った時に実際の利用者の家族から聞いた「ここがあってよかった」という言葉は、私にとって一番大事なものです。数とかそういうことでは言い表せません。

例えば、一般の病院では、きょうだいが一緒に過ごす時間がなかなか取れないのですが、私たちの施設では「きょうだいが一緒にお風呂に入れて本当によかった」という声をいただきます。お子さんが病院に戻ることになり、家族がバラバラになることを嫌がっても、ご自宅で看取ることは難しくて悩んでいたご家族が、「この施設にきて最後の時間を子どもと過ごせてよかった」とおっしゃったこともありました。

たくさんのケースではないけれど、この場所にしかできないことがあるんです。そのことで当事者の方から「よかった」と言われることが一番の成果で、充実感を得ています。

 

Q. これまでの活動によって地域や社会に何か変化を与えることができたと思いますか?

 

10年以上前に始めた時は、国や自治体の関係機関でもなく、お金の目処が立っているわけでもなく、大金持ちがお金を出してくれるわけでもなく…と、本当に0円からのスタートでした。私たちのような素人が0円から始めて施設を建て、一つ形を作れた。もっと専門家が揃っている団体もあるかもしれない。でも、そうではない私たちの団体が、いろんな寄付を集めて実現することができた。そのこと自体が、同じような条件から何かを始めようと考えている人たちに、「あ、自分たちもできるかもしれない」と感じてもらえるきっかけになったのではないかと思っています。

 

Q. 田村さん自身にはどのような変化がありましたか?

 

最初は、チームや組織でやっていくということに、すごく甘い気持ちがあったと思います。

八方美人なところがあるので、皆が気持ち良く、楽しく働いてほしいって思うんですね。傷つけたくないと、大切なことをごまかしてしまう。でもそれはリーダーとしてやってはいけないことだったと今は強く思っています。意見の対立や方向性の違いがあったときに、やっぱり強い気持ちで、チャイルド・ケモ・ハウスのミッションとか、なぜこの活動をしているのかとか、活動をしている人たちが「人として」どんな姿勢で何を大事にして活動しないといけないかを、リーダーはその時に敵を作ってもはっきり表現しないといけない。

今は、その時にスタッフが賛同できない内容であっても、一貫したポリシーやミッションでやっていくことが大事だなと思っています。

 

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